2009年10月14日水曜日

[絵本レビュー] かいじゅうたちのいるところ(モーリス・センダック さく)

4 stars心温まるお話なのですが
童話館ぶっくくらぶから今月の次女 (3) 向けに送られてきたのがこの本,「かいじゅうたちのいるところ」です。偶然にも実写映画化され試写会もされ,今話題になっている絵本ですね。この絵本は,なんと全世界で2000万部、日本でも100万部も売れているベストセラーだそうです。アマゾンの書評でも星 5 つの評価。児童向けの推薦図書にもなっている,大変人気の絵本です。

しかし,この絵本を書評するのは難しいなと思いました。

あらすじはこうです。主人公のマックスが母親に叱られ,夕ご飯抜きで部屋に閉じ込められます。すると部屋が森になり,海になり,マックスは船に乗って「かいじゅうたちのいるところ」に行きます。そこでマックスはかいじゅうの王様になるのですが,帰りたくなり部屋に戻ります。するとあたたかい夕ご飯が部屋においてありました。

さて,この絵本を読んで最初に感じたのは,「不思議なお話だな。かいじゅうたちのいるところに行ったけれど,マックスは家に帰れてよかった。ちゃんと夕ご飯もあったし。お母さんが用意してくれたんだね。」です。次に「絵がいいな。」です。かいじゅうが親しみやすくカワイイのです。少し怪しい雰囲気もあるのですが,よく話すと友達になれそうな...そんな感じのかいじゅうなのです。「自分も少しだけならそこに行ってみたいな」そんな気になります。

そして最後に,こう感じました。「かいじゅうたちのいるところ」はマックスの心の中にあるんだろうな。母親に叱られて部屋に閉じ込められ,心の中のかいじゅうの王様になったけれど,やっぱりさびしくて母親のことを考える。そうすると,ちゃんと温かい夕ご飯を用意してくれていたことを知る...男の子の心の中を描いた作品なんだな。いいお話です。

やんちゃざかりの男の子の心の動きを,子供にも楽しめるストーリーで絵本として表現したこの作品はすばらしいものだと私は思います。だけれど,おそらくこの絵本を読み聞かせしてもらえるであろう子供たちは,そんな風には感じないと私は思います。こどもはもっとストレートに捉えるからです。

子供には難しいことがわからないのではありません。子供の立場でストレートに捉えるはずなので,作品には登場しない母親の気持ちを察したり,男の子の気持ちの変化を考えたりはしないということなのです。

でも,この作品の良いところはまさにそこです。

これは年齢によって評価するポイントが変わってしまう作品です。大人が読み聞かせする絵本としてはまちがいなく星 5 つでしょうが,子供に読み聞かせする絵本としては星 3 〜 4 でしょう。面白いけれど,そこまでではないと思うからです。

長々と書きましたが,最後にまとめとして,もういちど感想を。

「不思議で,ちょっと怖くて,でも楽しくて,最後は少し安心する」面白い絵本でした。

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