2011年2月8日火曜日

[絵本レビュー] こんとあき (林明子 さく)

5 starsドキドキしながら祖父母の家にひとりで行ったことを思い出します
不審者がいるので小さな子供がひとりで外を出歩いてはいけませんと言われてどれくらい経つかわかりませんが、私の子供の頃は幼稚園児でもひとりで公園に行くし、小学生にもなれば親類の家にひとりで出かけたものでした。「こんとあき」は、そんな一昔前の子供の小旅行のドキドキを、「こん」というキツネのぬいぐるみにうまく映し出している素晴らしい作品だと私は思います。

作者は私の大好きな林明子さん。林さんの描かれる幼児期の女の子の絵は、近所に住んでいそうな女の子で親しみが持てますね。

女の子の名前は「あき」。あきが生まれた時から一緒にいるキツネぬいぐるみの「こん」は一番のお友達のようです。その「こん」の腕がほころびてしまったので、おばあちゃんの家に直してもらいに行くことにしました。小さな「あき」と「こん」の2人旅です。

小さな「あき」を「こん」がリードしながら旅が進みますが、「あき」と「こん」はいろいろな事に遭遇します。駅でお弁当を買いに出たら「こん」が座席に帰って来なかったり、ちょっと寄り道をした砂丘で「こん」が犬に連れて行かれたり...。最後は不安に打ち勝ちながら、「あき」は「こん」をおぶっておばあちゃんの家にたどり着きます。子供の頃の旅行は、ワクワクとドキドキと不安とがんばりと安心とが次々とやってくるものだと思いますが、まさにそのとおりのお話です。そして、到着したおばあちゃんの家では「あたたかさ」が待っています。それも私の子供の頃の経験と同じです。

うちの娘達は、「こん」と「あき」の冒険物語として読んでいると思いますが、私にとっては自分の子供の頃の昔話を読んでいる気分でいます。

「○○ちゃんも、あきみたいに一人でおばあちゃんの家に行ってみる?」と言いたいところですが、その言葉を安心して出せない今の環境に、寂しさを感じますね。

絵本の書評というより、私の気持ちになっていましました...。

追伸)
Amazon を覗いていみると、「こん」をおぶっておばあちゃんの家に到着するシーンを、大好きなぬいぐるみや人形からの卒業として捉えている人が少なくないですね。なるほど、そういう捉え方もあるのか。

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