「近所の○○幼稚園が定員割れになったそうだよ」と妻から聞きました。
そこは近所では人気の幼稚園で,漢字の読み書きや算数などの幼児教育に力を入れておられるところです。定員割れとは驚きです。その園に通う子を持つ幼稚園ママ達によると,今年度のプレ保育が机に座った勉強に偏っていたので逆に敬遠されたのではという話でした。ま,ただの噂ですし,これ以上のつまらない詮索はよしましょう。幼稚園は義務じゃないのでそれぞれ園の方針があり,入る方は気に入った園に行けばいいわけですから。
しかし,この妻の言葉は私の中に引っかかりました。私が最近気にかかっていたことと関連するからです。
私は会社の若手社員を現場で教育しています。指導する上で一番難しいのは,仕事の心構えをいかに教えるかですが,次は,技術的なことではなく,想像力をいかに発揮してもらうかです。私の仕事は技術職ですが,このように技術の前に身につけておくことはたくさんあります。これは,おおよそ仕事と名のつくものに共通すると私は思っています。どんなことであれ,仕事を頼んだ人を満足させるには想像力は欠かせません。想像力のない人の仕事は困ります。変化に対応出来ないからです。学校では手法を教えるよりも,考える力や想像力を鍛えて欲しいなと思っていたところでした。
想像力がないと,技術の使いどころと使いようがわかりませんし,創造的な仕事もできません。想像力はとても重要なファクターです。そして,想像力は興味と関係します。興味を持てるから,思いつく --- 想像できます。だから,どんなことにも興味を持つタイプの人は思いつきが多く,かゆいところに手が届いている仕事をしたり,たとえわからないことがあって も不明点がクリアなので助けも出しやすかったりします。また,想像力のある人は自分の技術や知識の不足しているところもわかるので,成長もしてくれます。ところが,技術や知識があっても想像力のない人はそこでストップが多いです。逐一指示が必要なので,成長が極めて遅いのです。
私の考えでは,こどものうちは鍛えにくいことから教育すべきです。例えば「コミュニケーションを上手にできる」とか「自分の考えを発表できる」などの社会的なこと。大人になったら変えることはきわめて難しいので,三つ子のなんとかじゃないですが,幼児期がとても重要です。音感や運動能力なども同じで,一流になるには子供のうちからだそうですね。
そして,想像力も鍛えにくい。だから,ものごとにプラスの姿勢で臨み,興味を持ち,想像力をもって取り組むことはぜひ教育したい。でも,漢字の読み書きや四則演算は乱暴に言ってしまえば,どうでもいいです。すくなくとも二の次です。
さらに,漢字や算数には弊害があって,学校の成績にも即効性があるし,勉強をしているつもりになってしまうので,問題を設定する力や思考する力などの本来の勉強に目を向けにくくなります。しかも数学の本質は論理力と抽象力のはずで,計算力じゃありません。
だから,私は自分が勉強をしてきた方だし,子供にもしっかりと勉強をして欲しいですが,ただの読み書きや算数から学習を始めてしまうことには反対なのです。