2010年6月27日日曜日

[絵本レビュー] とんとんとめてくださいな(こいで たん著)

5 stars次にどんな動物が出てくるのかわくわくする
3匹のねずみが山道で迷い,主(あるじ)のいない家に泊めてもらうお話。すると,つぎつぎに動物達がやってきます。トントンと戸を叩き,「泊めて下さいな」という言うわけです。次はどんな動物がやってくるんだろう。読んでいて,そんな楽しみがあります。

そして最後に,おおきな影がやってきて 動物達が震えるのですが,それは家の主,優しいクマおじさんだったのでした。そして,みんなで温かいスープを飲んで寝ます。そんなお話。

この絵本の魅力は,書かれていないところまで想像したくなる,細かい人物(動物)描写と,それに負けないくらいの背景の書き込みでしょう。

よく見ると,ねずみ達が入った家には「はちみつ」の瓶があったり,本や装飾がクマを思わせたりと,お話のヒントが隠されています。うちの子供達は,そういうところが楽しいようです。

「くまさんの家だよ。ほら,はちみつ!」

とか言って楽しんでいます。私も,楽しい話だなぁと思い一目惚れした絵本なので,とても気に入っています。3匹のねずみが活躍する他のお話の中で一番好きです。

ちなみに,「とてもとても あついひ」はかなりお話がむちゃな感じがして,思わず「うーーーん?」とうなってしまいました。「とんとんとめてくださいな」も勝手に家に上がり込んでしまってむちゃなんですが...

参考)

2010年6月13日日曜日

エルマーのぼうけんすごろく

確か今年のお正月だったかと思いますが,本屋さんでいいものを見つけました。

それが写真にある「エルマーのぼうけんすごろく」です。なんと,あのエルマーのぼうけんの舞台...あの地図をすごろくにしたものです。地図好きの私には,あの地図がピカピカの大きな紙にカラーで印刷されているだけでワクワクするのに,それがすごろくになっているんですから,「これは買いだ!」と,迷わず購入しました。

結果はあたり。春頃までは何度も何度も遊び,未だにときどき娘達(5歳&3歳)と遊んでいるくらい,我が家では人気のあるおもちゃです。

ルールは小さな子にもやさしいものになっていて,時々強制的に止まらされてカードを引かされます。そのぶん追いつく確率が高くなり,誰にでもチャンスがあるという訳です。もちろん,その止まらされるマスはエルマーのお話に関連する場所なのは言うまでもありません。サイやライオンなどに会うところです。そして,カードには,ちょっとした芸をする指示があって,それも楽しみの一つになっているという仕掛けになっています。

対象年齢は,かなり低めだと思います。カードの内容が,言ってみれば「ちょっと幼稚」なので,楽しめるのは幼稚園あたりじゃないでしょうか。ただ,エルマーのぼうけんを読み聞かせてもらう幼稚園児というのは少なそうなので,このおもちゃは対象年齢の設定を失敗しているんじゃ...とちょっと思っています。

2010年6月10日木曜日

[絵本レビュー] ちいさなきぼりのおひゃくしょうさん (アリス・ダルグリーシュ 著)

5 stars細かく描き込まれた絵がとてもすてき
私は絵本は絵よりもお話の中身を重視するタイプですが,そんな私でも「これは絵が楽しい本だなあ」と思う一冊です。アニタ・ローベルさんのすてきな絵が,「木彫りのお百姓さん夫婦が動く」という強引な設定を,自然なことのように感じさせてくれます。その絵は書き込みの細かな絵で,周囲に草花や登場人物を曼荼羅のような形で配置しているところが面白いです。両方の作家に失礼を承知で言うならば,「さくらももこさんの描かれる絵のよう」とでも言えばわかっていただけるでしょうか。

うちの娘達も,この絵本の絵が好きなようです。絵本を読みながら,「あ。ここにひつじがいるよ」とか「舟にぶたがのってる!」とか言いながら,お話の内容を挿絵で追うのが楽しいようです。

さらに,読む方の私としては(滑舌の悪い私としては),星川 奈津代さんの訳文が読みやすくていいなとも感じています。文章の流れが良い絵本は,声に出して読むとなんだか落ち着いた気分になります。不思議ですね。

2010年6月4日金曜日

[絵本レビュー] スモールさんはおとうさん(ロイス・レンスキー 著)

2 stars
だいじなことが書いていない
スモールさんシリーズの1つ。スモールさんの家族の生活を紹介した本です。

この本,「まずい絵本」という訳でもないのですが,面白みに欠けます。家族の温かな生活を描いているようでいて,あまり温かさが感じられません。

家族の生活を,子どもが見る時のように,具体的で断片的に描いているのですが,いちばん大切なところがぬけちゃってる,そんな気がします。例えばこんなくだりがあります。
ばんごはんの したくが できています。
スモールさんの かぞくは,
そろって いただきます。
おいしい おいしいと いただきます。
で,何を食べたんでしょうね。挿絵では,テーブルの上にステーキやパンやマッシュポテトのようなものが見えます。なぜ,何を食べたか教えてくれないんでしょう。それはとても大事なことなのに。

作品を比べるのは良くないとは思いますが,私の好きな「パンやのくまさん」の一節を紹介します。
くまさんは,(中略)ばんごはんを たべに おくへ
いきました。だんろのひで マフィンを あぶり,
きいちごのジャムを ぬって たべました。
それから,ゼリーも たべました。
おいしいなんて書いていないけど,おいしいんだろうな。おいしかったんだろうな。そんな風に想像が膨らみます。それは大事なことが書いてあるからだと私は思います。