2009年7月5日日曜日

実験を魅せる人が TV にでる --- 「理科に興味を持つ子を増やす」という話は納得がいかない

私はスポーツ観戦以外は民放の TV 番組をほとんど視ないので,チャンネルを変えたときや実家に帰ったときなんかに目にするくらいなのですが,いわゆる理科の実験をおもしろおかしく紹介してくれる先生が TV に出ていることがありますね。ぜんじろう先生は私も知っているくらいなのでとても有名だと思います。彼らの仕事のすばらしさや魅せる能力のすごさは否定しないのですが,番組の流れが「先生のこのような実験を紹介することで,理科に興味を持つ子が増えて,理科離れの問題の解決に繋がる」のようになっていることが多く,それには疑問を感じずにはいられません。

「理科離れ」の原因は理科に興味を持つ子が少ないからでしょうか。私はそうは思いません。理科に興味を持つ子は自然に持ちます。それは,歴史や音楽や,その他の科目でも同様だと私は思います。歴史を語るのが上手な先生に授業を受け持っても,歴史に興味を感じない子は歴史好きにはなりません(私です)。子供ながらに「この先生は理科好きじゃないな」と思う先生が小学校の担任だとしても,理科が好きな性分なら天体や化学実験に惹き付けられます。子供の興味は「きっかけ」を見逃しません。実験の上手な先生に頼らなくてはならないほど子供達はやわじゃないと私は思います。

大事なのは,「子供の興味をどれだけキープし続けられるか」だと思います。だから実験で理科に興味を持っても,それをキープしてあげられないと意味はありません。

つまり私の言いたいのは,理科離れの原因は興味を持つきっかけがないのではなく,子供達の興味を削いでしまうなにかがあるんだと思います。「他の道に進ませようとする親の思い」だとか,「理科の道を進むことに希望が持てない環境」だとか,「好きなものを続ける意欲を持つように育てられていない」とかでしょうか。その他にもあるかもしれません。だから実験をいくら「魅せて」もらっても,理科離れ問題には効果なしと私は思っているのです。

なぜに理科の実験を魔法のように魅せる人や番組がでてくるのかが私には謎です。学校の現場では,そうでもしないと理科の授業がうまくいかないのでしょうか。私の知らない別の問題があるのかもしれませんね。

ただ,理科好きの人ならみなさん分かっているはずです。理科好きの子供は「魔法のよう」だったりするから理科や理科実験に興味を持つのではありません。その背後にある「仕組み」や「秩序」,おもいがけない「単純さ」に惹かれるのです。別に魔法のようにみせてくれなくてもいいんです。現象に「おぉ!」と思って楽しむのは非常に理科好きじゃない人の考え方で,理科好きの人は背後の理屈に「おぉ!」と思うはずです。

そうじゃないですかね? みなさん。